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―倉本順季の場合―
今更聞かれてもはっきりとは覚えていません。
記憶なんて楽しい事ほど忘れてしまいます。そうでしょ?
1999年、電気が止まってしまうとか、ミサイルが発射されるとか
世間が騒いでいる中、芥瀬聖と出会いました。
被っている帽子の色が違ったので、彼は隣の小学校の生徒だったと思います。
覚えているのは今年みたいにとても暑い夏だったということ。
何年か経って、彼と再会しました。ドラマみたいな再会では無かったです。
すぐに分かりましたよ。
一緒に住み始めるまでそんなに時間はかかりませんでした。
大阪・天王寺駅近くの高架下です。知っているでしょ。
1年中じっとりと湿った天井もそこで過ごした時間も僕は好きだったのに
あなた達のせいですよ?どうしてくれるんですか。
―芥瀬 聖の場合―
向こうから声をかけてきて煙草と缶コーヒーをくれました。ジュースだったかな。
地元が近い事が分かって、よく会う様になりました。
当時住んでいた家は扉の立て付けが悪くて嫌でした。蹴っても直らないし
大家は電話に出ないし、最低でした。
一緒に住まないか?って言われて、翌週にはその時の家を引き払いましたね。
僕が悪いんです。あいつは何も悪くないんです。お願いします。
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